自己紹介
1950年生。北海道育ち。
子供の頃に患った蝶への熱病が98年、30年ぶりに再発。今のところ完治の見込みなし。 こまったものだ。 現在は北海道在住。 ___________ エキサイト以外のリンク 日本道路交通情報センター あやはべる/撮影日誌 蝶の観察記録 My Favorite Butterflies of JAPAN my蝶あるばむ Hirokou's Field Notes naoggio写真日記 受身の園芸 自然散策雑記帳 四季おりおり Googleマップ 最新の記事
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先の拙ブログ2018年2月16日付けの続きです。もしアゲハ類の若齢幼虫が “鳥の糞” に擬態しておらず、且つ “分断色” でもないとすればナミアゲハの若齢幼虫が野鳥に襲われない(注1)理由は何でしょうか?
それについて私は2つの可能性があると考えています。 (A)野鳥はもともと黒っぽい幼虫が嫌いなのではないか? 餌として今までに一度もイモ虫、毛虫などを見たことがないヒヨコ15羽を用いてキャベツにつくモンシロチョウの幼虫(=アオムシ・緑色)と同じくキャベツを食べるカブラハバチの幼虫(=クロムシ・黒色)のそれぞれに対する好餌性を調べた実験があります。(注2) その実験の結果によれば。。 「 」内引用 「ヒヨコにアオムシあるいはクロムシを10頭与える実験を3回繰り返した。虫を経験したことのないヒヨコは、初めはアオムシもクロムシもあまり食べなかった。しかし、アオムシを食べたヒヨコの数は試行を重ねるごとに増えていき、結局3回目の試行では8羽中7羽がアオムシを食べるようになった。また、食べられたアオムシの総数も試行を重ねるごとに増えていった。したがって、アオムシはうまいと考えてさしつかえない。一方、クロムシを食べたヒヨコは、3回目の試行で初めて見られたものの、1羽のヒヨコが1頭のクロムシを食べたにすぎなかった。3回目の試行時にはヒヨコは8時間も絶食状態となっていたので、空腹に耐えかねたヒヨコがやむをえず食べたと考えられる。」 (B)ジャコウアゲハ類の幼虫に擬態をしているのではないだろうか? 体内に毒を持つジャコウアゲハの幼虫は例え終齢になっても他のアゲハ類とは違って緑色にはなりません。この理由は体内に毒を持っているので野鳥に食われる心配がないからであると考えられます。実際ジャコウアゲハの幼虫のツートンカラーは一見して警戒色を想起させます。ここで注目すべき点はアゲハ類の若齢幼虫の色合いが、このジャコウアゲハの幼虫に大変よく似ていることです。 恐らく野鳥にとっては毒を持つジャコウアゲハの幼虫と毒を持たない他のアゲハ類の若齢幼虫とを見分けるのは大変なのではないでしょうか。そうだとすればアゲハ類の若齢幼虫は “鳥の糞に擬態” しているのではなくて “ジャコウアゲハの幼虫に擬態” している可能性があります。と言うか、そもそもジャコウアゲハの成虫については図鑑(注3)に「“毒蝶”として擬態のモデルになっている種が多い」と記載されているのです。ならば幼虫もまた擬態のモデルになっていたとしてもおかしくはありません。単純な発想ですが南方起源のPapilio属の全体が、同じく南方起源のAtrophaneura属(ジャコウアゲハ属)の幼虫に擬態をしたのがもともとの起源ではないでしょうか。 今回の3回シリーズは朝日新聞のコラム欄に載っていた次の言葉(注4)を愚かにも真に受けて試みたものです。 「発見の障害になるのは無知ではなく既知である」 という訳で、かなり無謀な企てでしたが最後まで笑わないで読めましたか? (注1)「雌によって産下された卵が成虫になるまでにどのような原因でどれくらいの割合で死亡するかをまとめ、表にした ものを生命表といます。」ナミアゲハはこの生命表が作られている数少ない蝶の1種なのだそうですが、それに依ればアゲハの若齢幼虫は鳥類には殆ど捕食されていません。(1齢~3齢では全く捕食されていません) 「昆虫の保全生態学」 渡辺守 著 東京大学出版会 2007年 (注2)「蝶の自然史」大崎直太編 北海道大学図書刊行会 2000年より第7章 「幼虫の防衛・隠蔽色と警告色」より“モンシロチョウ幼虫の 隠蔽色とカブラハバチ幼虫の警告色の効果の実証” (注3)「原色日本蝶類生態図鑑」福田晴夫他編 保育社 昭和59年 (注4)「発見の障害になるのは無知ではなく既知である」 ロックフェラー大、B.マキュアン教授のドアに貼ってある標語・2017年3月23日、朝日新聞 福岡伸一氏のコラムより
by clossiana
| 2018-02-23 20:31
| 蝶の不思議
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Comments(6)
落ち?をどのようにつけるのか興味深く拝見していましたが、そちらへ行くかという感じです。
(A)については、やむを得ない面はあるとしても裏づけとなる実験が貧弱である。 1) 家禽であるヒヨコが自ら餌を探さなければならない野鳥と同列に論じることができるか。 2) 天敵は限定されているケースも多く、チョウの青虫とハチの黒虫を比較することに無理がある。 3) 黒虫を食べたヒヨコが4回目はどうだったのかも含め、実験回数・個体数が少なすぎる。 (B)についてはなるほどと思いましたが、だとすると4齢以降も、蛹、成虫までもなぜジャコウに似せないのかとの疑問が残ります。ま、ジャコウに似たチョウばかりが翔んでいるなら、今ほどチョウに興味は持てませんが・・・(^^ゞ 4齢以降は別の手法で生き残りを図っていると考えるほうが適切ではないでしょうか。 いずれにしても、アゲハの戦略を全てのアゲハチョウ科に当てはめるのはこれまた無理がありそうで、その辺も考慮しておく必要がありそうです。 目を開かされる点が多々あって感心させられっぱなし、釈迦に説法の感はありますが、私の感想です。
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clossiana at 2018-02-26 14:37
uke-enさん、コメントありがとうございます。 (A)まぁ、擬態は証明するのも否定するのも難しいのですが。。 1)野鶏が家禽化されたのは恐らくですが、この数千年の間の何処かの時点です。その前の野鶏の期間は何十万年以上でしょう。ですので野性味が失われているかどうかは疑問です。 2)チョウ類だけを獲物にしている天敵(=スペシャリスト)は知られていません。それはチョウ類は個体数が少なすぎるからのようです。 3)↑の実験はアゲハの若齢幼虫の擬態とは全く別のテーマについての論文ですので問題があるとすれば、その論文の引用の是非だけです。 (B)成虫は擬態のモデルとなっていることは本文中に記載の通りです。5齢が似ていない理由が何かしらの制約があるためか?又は最適化の現れなのか?はわかりませんが私は前者ではないかと考えています。その理由は終齢幼虫のサイズがジャコウは40mm位しかないことです。一方で他のアゲハ類は50mmを超えます。つまりモデルよりミミックがでかすぎるので他の生存戦略を切り換えたのかな?などと妄想しています。 アゲハ類の誕生は日本列島の成立以前のはるか昔の出来事です。ですので今、ある僅かな手掛かりで想像したり妄想したりするしかありません。その辺りはご理解を頂きたいところです。
アゲハ類の若齢幼虫が鳥の糞に擬態しているという説に対しては、今まで疑問を持ったことがありませんでした。
お説のジャコウアゲハの幼虫に擬態しているというのは、まさに目からうろこの感じです。 学習効果っていうのは遺伝しなかったと理解しているのですが、ジャコウアゲハの幼虫ってアゲハ類とは生息場所が多少違うと思うのですが、それでも効果があるんですかね。 鳥は行動範囲が広いからそういうこともありなのかな。
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clossiana at 2018-02-28 15:17
ダンダラさん、コメントありがとうございます。
鳥の糞への擬態説はどうも西洋起源?のようで、ジャコウアゲハ類の幼虫を知らない国の人の発想のように思えます。学習効果が遺伝をしないのは仰られる通りです。 擬態の成立要因は何らかの理由で起こる突然変異がスタートです。この突然変異の中で生存競争に有利なものが生まれることは稀らしいのですが、もしも生存競争に有利な形質(例えば体色)が生まれると自然淘汰の下では、やがてはその形質を持った個体のみが増えていき、やがては種の全体がそういう形質を持つことになります。これを何十万年も間、繰り返したことにより完成度が一層、高くなってきたというのが、今日の擬態に対する考え方のようです。原始的なアゲハ類と言われているParnassiusやLuehdorfiaの幼虫はいずれも黒っぽいので、それが原型ではないでしょうか。 今日では生息場所が違っていても擬態の効果はあるのではないかと考えられています。例えば南方でスジグロカバマダラを食べた経験のある渡り鳥は本州でツマグロヒョウモンを食べないでしょうし、春にウスバシロチョウの幼虫を食べた鳥は他の季節にも似たような黒い幼虫を忌避するのではないでしょうか。これは野鳥の行動範囲が広いこと、生存期間が長いこと、学習能力が高いこと等であると言われています。
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辺蟲憐
at 2018-03-15 21:26
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擬態…悩ましい言葉?ですね〜。最後まで笑わないどころか 未だウ〜…と唸っております。Byasaの分岐がPapilioより古いので 元々似るとすれば 似せているのではなく 離れて行ってるのかもですね。緑色の幼色だったり 勿論成虫のバリエーションだったり…。
「発見の障害になるのは無知ではなく既知である」これを真に受けるのは ちょっと難し過ぎる気がしますね。実際 clossianaさんの この面白い記事も既知をベースに構成されてるし。w 所謂 科学の基本 既知を疑い 仮説を立て 実証する この慣れた手法に 無知はちょっとキビシーですよね。w
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clossiana at 2018-03-16 10:48
辺蟲憐さん、コメントありがとうございます。
擬態の問題はいつもミミックであろうと言われている対象を人間が見て“そうではなかろうか?”と言っている訳ですが、それを当の人間が“本当かな?”などと疑ったりしているのですから真実はやはり遠いような気がしますね。 PapilioはもともとはByasaにもっと似ていたのが次第に緑色になって離れていく過程にあるとしても、元々のテーマである“鳥の糞に擬態?”の観点からは同様に“本当かな?”という結論が導かれるように思います。 発見の。。云々について私の見解ですが私の場合はフィールドを徘徊していて「おやっ?」と思うことが割とあったりしますが、この「おやっ?」と思うこと自体が既知から導かれているケースが多いのです。ですので辺蟲憐さんの仰られていますように既知がベースにあるお陰であることは否定出来ません。しかし一方では図鑑等に記載されていることが観察した内容とは違うことが多々あるのも事実です。この場合ですが図鑑の記載されたことを観察された先輩も、それを「おやっ?」と思う私も互いにアマチュア同士です。ですので、そのレヴェルの私がB.マキュアン教授の言葉を引用したのは勇み足だったみたいです。
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